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MY FIRST AID ワークショップ@三俣山荘
2026.08.26 PRODUCT

MY FIRST AID ワークショップ@三俣山荘

もしも山でケガをしたら…

突然ですが、もし山行中にケガをしたらあなたはどうしますか?自分のファーストエイドキットに何が入っていて、それをどのように使うのか?すぐ答えられるでしょうか。

その答えを自分自身で考えて、必要なファーストエイドを見つけていく。そんなワークショップを2026年7月に北アルプスの三俣山荘で開催しました。全3回の講座に延べ約70名が参加。標高約2,500mというリアルな山の環境で、山小屋で実際に起きている傷病やトラブルを知り、自分のファーストエイドキットを開いて見直していきました。

2025年に発売し、パーゴワークスの定番商品のひとつとなった「MY FIRST AID」。山岳ガイドや医療従事者へのヒアリング、約1,700件のユーザーアンケートをもとに開発したファーストエイド用品を整理して持ち運ぶためのバッグです。MY FIRST AIDは単に使ってもらうだけではなく、製品をきっかけに山での安全や、自分に必要な備えについて考えてもらうこと目的としてつくりました。

パーゴワークスでは、これまでも自社イベントなどで参加者が自身のファーストエイドキットを見直すワークショップを行ってきました。

「もっと多くの人に、ファーストエイドキットについて考える機会を届けられないか」

そう考えていたところ、三俣山荘代表・伊藤敦子さんと三俣山荘グループの事業統括・石川吉典さんから「ファーストエイドキットをテーマにしたワークショップを開催し、MY FIRST AIDを取り扱いたい」と声をかけていただきました。打ち合わせを重ねるなかで、彼らが近年の登山に対して抱く危機感があることがわかりました。

「最近、十分な準備をせずに山に入り、山小屋に助けを求めるケースが増えています。山では何かあってもすぐには医療機関へ行けませんし、山小屋の物資にも限りがあります。だからこそ一人ひとりが山に入るリスクを自覚し、備えてから来てほしい。私たちはそのきっかけをつくりたいんです。MY FIRST AIDは、自分で必要なものを考えて入れるという仕組みで、私たちが発信したい『登山はすべて自己判断』という考えに合致しています。そこで、山荘利用者の方々に対してワークショップを実施し、自身の山行を見直しながらファーストエイドキットも考え直す機会を提供したいと考えています」

今回はパーゴワークスからMY FIRST AIDを提供し、三俣山荘で販売。その売上を山荘の診療活動に充ててもらうことに。そしてMY FIRST AIDワークショップ経験者の相田(通称「ケニー」)が三俣山荘を訪問し、実際にワークショップも行うことになりました。

いざ、北アルプスの心臓部へ!

三俣山荘は、長野・岐阜・富山の県境にそびえる三俣蓮華岳の麓にあります。「北アルプスの心臓部」とも呼ばれる、山深いエリアです。

新穂高温泉登山口から三俣山荘までは約17km。累積標高差は約2,000mに及び、一般的なコースタイムでも10時間ほどかかります。そう、とにかく遠いのです。

私たちが新穂高温泉登山口を出発したのは、7月24日の朝5時30分過ぎ。提供したMY FIRST AIDの約半数は、自分たちで背負って運びます。MY FIRST AIDでパンパンになったZENN 45を背負い、いざ三俣山荘へ。

この日はとにかく暑く、歩いても歩いても汗が止まりません。それでも、双六岳のカールや、反対側に見える槍ヶ岳の姿に元気をもらいながら、三俣山荘へ向かいます。

山荘に到着すると小屋は多くの登山者でにぎわい、夏山シーズンらしい風景が広がっていました。

売店では、先にヘリで荷揚げされたMY FIRST AIDがすでに販売中。かわいいポップは小屋番さんが作ってくれました。
三俣山荘を訪れた際は、ぜひチェックしてみてください。

山小屋から見た「登山の今」

ワークショップは二部構成で、私たちの滞在中に全3回開催しました。前半は、三俣山荘の伊藤さんと石川さんによる「山小屋から見た傷病トラブルと登山の今」。後半は「MY FIRST AIDを通じて山行を考える」ワークショップです。

前半の講話では、日々登山者を迎えている山小屋の視点から、山で起きている傷病やトラブル、現場での対応について紹介されました。講話のなかで挙げられたのは、登山者の体調や力量、準備不足に関わるさまざまな事例です。

・自身の体質や持病について十分に把握せず、山中で重篤な状態になってしまった
・装備を軽量化しすぎたことで、防寒が足りず低体温症になってしまった
・靴が壊れ、山小屋の補修用ガムテープを大量に使わなければならなくなった
・「自分の経験でこのルートを歩けるか」と、山小屋へ電話で判断を求める問い合わせが相次いでいる

山では、街と同じようにすぐに医療機関に行けるわけではなく、山小屋に備えられている物資にも限りがあります。そのため、まずは登山者自身が体調や力量を把握し、必要な装備と知識を準備して山に入ることが必要です。

山の現場で何が起きているのかを知り、山へ入る前に自分が何を準備すべきかを考える。そのことが、続くファーストエイドのワークショップへの入口となりました。

MY FIRST AIDを通じて山行を考える

後半は、パーゴワークスのケニーよりMY FIRST AIDの開発背景をお話しするところから始まりました。

「MY FIRST AIDは、ばんそうこうや薬などがあらかじめ入った救急セットではありません。使う人が、自分に必要なものを選び、整理して持ち運ぶための製品です。内部には、独自に開発した「POPS(Paago Organizing Pocket System)」を採用しています。

専用のジッパーバッグを本のページのようにめくることで、入っているものを一覧できる構造です。バッグは取り外しや追加ができ、内容や用途に合わせて自由に組み替えられます」

(製品開発時のアンケート結果)

「MY FIRST AIDを開発する際、山岳ガイドや医療従事者の方々へのヒアリングに加え、約1,700件のユーザーアンケートを行いました。その結果、キットの中身には大きな個人差があり、人によって必要なものや重視するものが異なることが分かったんです。

例えば、日帰りのトレイルランニングと3泊4日のアルプス縦走では、行動時間も環境も、起こりうるトラブルも異なります。必要なファーストエイドの内容が同じとは限りません。毎回の山行に合わせて、中身を考えて持っていってほしい。それが私たちメーカーとしての願いです」

ファーストエイドキット、ちゃんと使えてる?

ワークショップでは、ケニー自身が山でファーストエイドを行った経験もご紹介。

「前年に南アルプスを縦走していた際、崩れた登山道で滑落して、右脚の太ももから膝にかけて出血してしまったんです。その際に持参していた生理用ナプキンとテーピングを使い、応急処置を行いました。自分は、ナプキンを止血用としていつもファーストエイドキットに入れています」

参加者からは「止血用にガーゼは持ち歩いていたけれど、ナプキンという発想はなかった」「自分のキットにも入れてみようかな」といった声が聞かれました。
続くパートでは、参加者の皆さんにも持参したファーストエイドキットを実際に開いてもらいます。開発時に行ったアンケート項目を使いながら、どんなものを持っているか挙手してもらいました。ばんそうこうやウェットティッシュ、エマージェンシーシートには、多くの人の手が上がります。

「持っているけれど、一度も使ったことがないものはありますか?」という質問に対して、参加者からさまざまな声が上がりました。

・絆創膏と頭痛薬以外は、とりあえず入れているだけかもしれない
・中身が入ったファーストエイドキットを購入して、そのままバックパックに入れている
・エマージェンシーシートは持っているけれど、一度も広げたことがない

ファーストエイドキットを入れっぱなしにしている人は、決して珍しくありません。しかし、それではいざというときに使い方が分からなかったり、「入れたつもりが、実は入ってなかった」などの可能性があります。また、ファーストエイドキットはバックパックに適当に入れるのではなく、取り出しやすい場所に固定しておくことも大切です。

そこでワークショップ後には、ケニーが持参したエマージェンシーポンチョも実際に試してもらいました。

シートのタイプとは異なり、すぐにかぶることができ、着用したまま行動できるのが特徴です。夜の外気温のなかで実際に着用し、暖かさを体感する参加者の姿も多くありました。

ファーストエイドキットは十人十色

ワークショップでは参加者が持参したファーストエイドキットを互いに共有する時間も。その一部をご紹介します。

・持病の薬は、予定する山行日数に加えて予備も持っている
・ペットボトルのキャップに小さな穴を開け、傷口を水で洗い流す際に使用できるようにしている
・腕を負傷した際、三角巾やウェアを固定できるよう安全ピンを入れている
・捻挫時の応急処置方法が記載されたテーピングキットを持参している

三俣山荘の伊藤さんにも、普段使用しているキットを紹介してもらいました。

「私はMY FIRST AIDのSサイズを使っています。中身は、自宅から山小屋へ向かうまでに必要な最低限のものです。以前は、もう二回りほど大きなポーチに入れていましたが、MY FIRST AIDを使い始めてから、本当に必要なものを厳選するようになりました」

ワークショップ終了後には、MY FIRST AIDを手にとる方も多くいました。参加者の一人である登山ガイドの方は、MY FIRST AIDのMサイズとPOPSを購入し、その場で自身のファーストエイド用品を詰め替えていました。

「これまでは赤いポーチにまとめて入れていました。でも職業柄、持ち歩くものが多く、中で迷子になりやすかった。MY FIRST AIDは項目ごとに整理できて探しやすいですね」

ワークショップが終わった後も、参加者同士で自分のキットや過去の経験について話し続ける姿がありました。ケニーの私物MY FIRST AIDには人が集まり、なかなか話は尽きません。

「私のファーストエイド」をつくっていく

今回の滞在中、全3回のワークショップを開催しました。北アルプスという環境のなかで、山小屋で実際に起きている事例を知り、自分が持ってきたファーストエイドキットを開いてみる。参加者の皆さんにとって、自分の備えをよりリアルに考える時間になったのではないでしょうか。

ワークショップでは、「これを必ず持っていくべき」というひとつの答えを提示することはしませんでした。大切なのは自分の行動や経験に合わせて、必要なものを考えることです。

ワークショップ終了後には、「次の山行では、これを入れてみよう」「一度も使ったことがないものが、本当に必要なのか見直してみたい」といった声が聞かれました。

MY FIRST AIDのコンセプトの通り、ファーストエイドキットは、一度完成させたら終わりではありません。山行と自分自身の経験に合わせて、少しずつ更新していく。その小さな更新を繰り返すことで、自分自身のファーストエイドができあがっていきます。

三俣山荘のみなさん、このような貴重な機会をいただきありがとうございました!

最終日はガスと時折降る雨のなか、5時間半かけて下山。三俣山荘の皆さんには、最後まで温かく見送っていただきました。

なお、三俣山荘では8月以降も登山における傷病をテーマにした講座とファーストエイドキットのワークショップを不定期で開催中とのこと。もし機会があれば、ぜひ参加してみてください!