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レース参戦記 Tarawera Ultra-Trail by UTMB
2026年2月、ニュージーランド北部で開催されたTarawera Ultra-Trail by UTMBの100マイルにアンバサダー・澤柳匠さんが出場し、見事3位を獲得しました!澤柳さんは本大会に2年連続で出場。「来年以降も機会があればまた走ってみたい」というレースの魅力と100マイルの旅路を、ご本人による臨場感たっぷりのレポートでお届けします。

澤柳匠(さわやなぎたくみ)選手
学生時代に陸上部に所属し、主に中距離(800mと1500m)の選手として活動。その後、社会人になったのちに登山を始め、八ヶ岳、北アルプス、南アルプスと国内の多くの山へ登る。国内登山・縦走だけではなく、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア(タスマニア)と多くの海外トレイルを歩く。「よりたくさんの山と景色を見てみたい」という単純な気持ちで30歳からトレイルランニングを始める。国内の100km以上のウルトラを走りながら、年1回は海外の100マイルレースに参戦している。
今回出場したのは、2026年2月14日開催のTarawera Ultra-Trail by UTMB100マイル。2025年に続いて2度目の参戦だ。2年連続で出場を決めたのは、単純に「ニュージーランドが大好きだから」。Covid-19で海外への渡航ができなくなった2021年を除けば、直近5年は旅行で毎年訪れるほど大好きな国だ。昨年2025年に同レースに出走した際は7位だったが、不完全燃焼感が強く残り、Top3には入りたいという気持ちで2年連続の出走を決めた。また、レース自体が累積獲得標高が3600m程であり、高山エリアもないため終始走れるコースとなっており、自分の好きなコースレイアウトであるというものも決め手の一つになっている。
Tarawera Ultra-Trail by UTMBとは?
2月の2週目(2026年は2月12日〜15日)にニュージーランドの北島のロルトア地域で開催され、100マイルの他に100k、50k、21k、14kと多くのカテゴリーがある。オセアニアで開催されているby UTMBレースの3つの内の1つである。100kはWestern States のゴールデンチケットレースとなっており、世界各国から有力選手が集まるのも見どころの一つ。100マイルカテゴリーは2026年が3回目の実施で、累積獲得標高が少なく、とても走りやすい高速レースである。レース中はロルトアにあるいくつもの湖の周りを走りながら、ニュージーランド特有のシダの森林や草原・林道を走れるのも魅力の1つだ。


レース前日〜当日まで
前回の2025年はレース前日に現地入り、受付をして翌日スタートという強行スケジュールだったので、今年は少し余裕を持って2日前に現地入りした。今回は家族も帯同し、レース後は家族旅行を兼ねた。
現地では少しでも旅行の気分を味わおうと、ホリデーパーク(日本でいうデイキャンプ場のような場所)でテント泊にした。

レース前日には受付を済ませ、会場のEXPOをぶらぶらしたりしたが、あいにくの雨だったのであまり長居はできなかった。必要なことだけを済ませて、スーパーへ買い出しに行き、早めに就寝をした。

レース当日、朝4:00にスタートのため、3:30前に会場へ到着した。スタート会場は、TePuiaというマオリの文化と地熱地帯を体験できる公園のような施設だった。深夜でよく見えなかったが、施設の装飾がマオリ文化を象徴していて、ニュージーランドっぽさが好きだ。

スタートラインに並び、去年と同じ顔ぶれに挨拶をして、すぐにカウントダウンが始まる。スタート前の主催者の挨拶が少し長引いてしまったようで、挨拶が終わった瞬間にスタートになってしまった。
スタート〜 A3 Buried Village(21.5km地点)まで
スタート直後は、TePuiaの施設内を走り抜けていく。間欠泉の観光名所も通るが、深夜なので何も見えない。ただ、施設内はカラフルにライトアップされて、なんだか楽しくなってしまう。

施設内を出ると走りやすい砂利道の林道が始まり緩やかな登り下りを繰り返す。登りは5’00~6’00/km、下りは4’30/km前後で走り続ける。シングルトラックに入り、足場が少し悪くなったりするが、それでも基本的に歩くことはなく走り続けなければいけない。
A1 のエイド直前から集団内がソワソワし始め、スピードが上がっていったが、まだ10km程度かつ、水分もほぼ飲んでなかったので、エイドをスルーしてそのまま先頭集団について行くことにした。
A2を超えて数キロ走ると、長いロードの下りが始まる。ここでは必携品になっている蛍光ベストを着なければならない。このベストはオセアニアでの規格があるらしい。

A3〜A11 Okatainaまで
A3を出た直後からは、森の中に入りシングルトラックをひた走る。左側の眼下には湖が見下せ、走っていてとても気持ちがいいエリアである。自分はここ数年は右腰と右足の慢性的な痛みがあり、足場の悪いトレイルで踏ん張ることができない状態が続いていた。そのため、このエリアに入った途端にスピードが落ちてしまい、先頭集団から離脱した。
全般的にニュージーランドのトレイルは綺麗に整備されているため、とても走りやすいが、一部レースのために切り開かれた湖畔のトレイルもあり、スピードが出しにくい場所もある。それでも日本の根っこだらけのトレイルに比べたら可愛いものだ。
A4とA5の間に湖を渡るためにボートに乗るポイントがある。昨年は寸前のところで第一便に乗りそびれてしまったので、今年は第一便に乗りたいと意気込んでいたがまたしても乗れなかった。直前で一緒になったランナーと第二便に乗り込んで、湖をボートで渡った。乗車時間は数分だが、このレースで唯一足を止めて、座って休憩することができる時間なので、とてもありがたかった。


ボートを降りた後は、広大な牧場エリアを走り抜けていく。このエリアはとても見晴らしがいいため、前後のランナーとの距離感が確認しやすい。はるか前方へ目を凝らしたが先頭集団を確認できず、だいぶ離されてしまった……と思った。

A5のRerewhakaatituでもエイドサポートが入れるので、家族からのサポートを受けた。曇っていたため、昨年より気温が低かったものの、蒸し暑さを少し感じていた。疲労感はそこそこあったが、エイドで娘がフラスクを手渡してくれ、「頑張って」の一言でとても元気が出た。

A5〜11までの60km以上は、途中1ヶ所(A8)でデポバックが使えるが、サポートが入れるエイドがないため、一旦ここでサポートとはお別れに。
A5以降は走りやすい林道が続く。途中、雨が強く降ってきたタイミングで、シダ植物が群生しているエリアを走っていると、ニュージーランドっぽさを感じられて、とても楽しかった。さらにはコスプレしているエイドもあり、by UTMBのレースではあるがちょっとしたゆるさがあるのもまたこの国っぽいのかもしれない。

A8~11では峠越えのため、ひたすら続く登り坂(8kmで500mくらい)、終わったらずっと下り坂となるが、昨年よりは足が残っていたため、1年での成長を実感できた。この峠の登り坂で前のランナーを3人ほど抜いた。
A11~A13(Tikitapu)まで
A11以降は深い森のエリアとなり、トレイル率が高くなる。途中、前半とは別の湖のそばを走るが、水がエメラルドグリーンでとても綺麗だった。その後は滝がいくつか出てくるエリアになったが、雨のせいもあり水量と音が凄まじくて、写真スポットには怖くて近づけなかった。
このエリアのトレイルはニュージーランドの深い森を物凄く感じられるので、とても好きなエリアだったが、今年は途中から降り続いた雨でとんでもなくぬかるんでおり、登りは滑ってスピードを出せず、下りは一歩間違えれば滑落してしまいそうなほどだった。昨年は疲労が強く失速し始めていたポイントだったので、ここを走り切って、昨年より良いタイムでゴールしたいと意気込んでいたが、トレイルのコンディションを鑑みてタイムは諦め、着実に進むことだけを意識した。
途中、ロープもなく泥だらけの急斜面を下らなければいけない箇所では、あまりにも走ることができなかったため、思わず一人で笑ってしまっていた。
A12以降は雨足が強まり、レインジャケットを着用していても少しだけ寒さを感じるほどだった。A13が自分にとって最後のサポートエイドだったので、そこでウェアを着替えようと思った。(A14もサポートできるが、ゴールまで10kmのためサポートなし)
事前に予備ウェアをサポートしてくれる家族に渡していなかったので、走りながら連絡をしようとしたが、森が深過ぎて携帯の電波がなく、連絡できなかった。一抹の期待を胸にエイドに到着すると、そこには着替えが用意されており、家族のサポート力にとても感謝した。
A13〜ゴール(Rotorua)まで
A13以降はトレイルや住宅街を走るエリアだった。登りの箇所は本来は走り切れる斜度だったが、路面のコンディションが悪過ぎて、歩くしかなかった。

当初はヘッドライトを使う前にゴールするのが目標だった。(15時間くらいだと日没前に走り切れる)しかし、雨と地表のコンディションでスピードが落ちたため、ゴール前で日没となってしまった。ヘッドライトを装着して走り始めたがなぜかライトが消えてしまう。エイドに戻ってライトを交換するか真剣に悩んだが往復で15分は使ってしまうので諦めた。

ゴール手前はこの樹林帯を暗いなか走った
代わりに携帯のライトを使ったが、光量が足りず全く役に立たなかった。これでは走れないとレース自体を諦めかけた時、ヘッドライトのバッテリーを入れ直したら点灯して、一人で歓喜した。(どうやらバッテリーの接触が悪かったらしい。)
A14は最後のエイドかつ、他のカテゴリーも通るのでとても賑やかで応援の人数が多い。ここを過ぎればロードを10km弱走ってゴールになるので、立ち止まることはなかった。ただ、このエイドは本場UTMBさながらの活気があるので入るだけで元気になれるし、鳥肌が立つので、是非体感して欲しい。
最後のロードセクションに入り、スタート地点近くを通ると「あぁ、ようやく戻ってきた」ととても安堵した。その後は、再び間欠泉があるエリアを通るのだが、ここはものすごく硫黄の香りが強い。横風が全て硫黄の香りがするので、温泉街を走っているような錯覚さえ覚えてしまう。間欠泉エリアを抜けると、残り3km程度となってゴールは目前である。
想定タイム(15時間15分)より2時間30分以上も遅くなってしまい、ゴール時は真夜中になっていた。雨も強く降っていたため、観客はまばらだったが、サポートしてくれた家族と同じレースに出走していた友人が出迎えてくれた。
ゴールエリアには温かい食事を取れる場所もあり、後半40km以上豪雨に晒されながら走り続け、冷え切った身体を温めながらようやく一息つく。家族と友人へ感謝するとともに、レース中の振り返りを共有し合った。


(写真はゴール直後で安堵している様子)
今回は総合3位でゴールし、表彰台に上がることはできた。しかし、雨で路面コンディションが悪いという条件で想定した以上に、タイムが落ちてしまったのは現状の足の状態を踏まえたとしても満足のいくものではなかった。
走り終えた直後は安堵感で一杯だったものの、翌日にはレース中の後悔や再挑戦の意欲が湧いてきている自分がいて、100マイルは本当に面白いと思った。
2年連続で走っていても、来年以降また機会があれば走ってみたいと思わせてくれるコースなので、この気持ちに飽きない限り、出場したいと思う。


今回のレースではRUSH7R(2023年モデル)を使いました。by UTMBのレースということで、必携品がやや多いですが、ドロップバックを設置できるエイドやサポートが受けられるエイドが多かったため、7Rで十分収めることができました。
悪天候が予想されたことでレインジャケットを着るタイミングがありそうだったことや、レース中に必携品である蛍光ベストを着用しなければならなかったため、ギアの出し入れがしやすい7Rを選択しました。
結果的に、ギアの出し入れには全くストレスなく、状況に合わせてレインジャケットを着脱しながら走ることができました。また、持ち運ぶジェルも少なかったため、前面ポケットで十分収まる収納力がある7Rはこのレースにぴったりな選択肢でした。
