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謎BUDDY × バックカントリースキー in 白馬乗鞍
2023.03.17 ACTIVITY HIKE

謎BUDDY × バックカントリースキー in 白馬乗鞍

トレイルランニング向けたRUSHやハイキングや登山をターゲットにしたBUDDYなど、さまざまなアウトドアアクティビティに対応したバックパックを開発してきたPAAGOWORKS。実は、2021年からバックカントリースキーヤーやスノーボーダーのためのバックパックの開発を進めています。

スノーボーダーとタッグを組み、プロトタイプをフィールドでテスト。フィードバックをすぐさま反映し、さらなるテストを繰り返す。ユーザーはなかなか知ることのない、PAAGOWORKSのモノづくりの裏側をお届けしたいと思います。ちなみに、こちらのモデルは開発「途中」。「発売前なのに公開しちゃっていいの?!」という声が聞こえてきそうですが、バックパックの新モデルがどのように作られていくのか。その様子をみなさんと共有しながら、完成を一緒に目指していきたいと思っています。

2021年、白馬にて開発スタート

開発がはじまったのは、遡ること2021年の冬。アルパインクライマー・スノーボーダーの船山潔さんとPAAGOWORKSのデザイナー・斎藤徹がひょんなことから意気投合。スノーボードの経験もある斎藤にとって、バックカントリーパックは、いつかは作りたいと思っていたプロダクトのひとつでした。

そこで、経験豊かな船山さんのアイデアと、バックパックづくりで培ってきたノウハウを詰め込むことで、PAAGOWORKSが考える理想のバックカントリーパックを作ろうと考えたのです。

国内有数のバックカントリー好適地である白馬にミシンと生地、パーツ類を持ち込み拠点を設置。昼間はフィールドテスト、夜はフィードバックをもとにプロトタイプを修正。ライダーの声を最小限のタイムラグで反映するという、PAAGOWORKSとしてもかつてないスタイルでの開発現場となりました。

現場でプロトタイプを分解し、縫い直す。ジッパーの位置を変えたり、新しい機能をプラスしたり、ときにはサイズそのものを変えることも。こんな芸当ができるのは、ブランドの代表である斎藤が第一にデザイナーであるがゆえなのです。

今回のプロダクトにおける開発のポイントは、バックカントリーに欠かせないアバランチギアのポケットや、ライディングの安定性や背負い心地のよさ、ハイクアップ時のフィット感やギアの取り出しやすさなど多岐にわたります。いくつものスノーギアを持ち込み、シチュエーションを想定しながら意見を交わしていきます。その光景はまさに「合宿」。

こうしてプロトタイプver1が完成。ピンときた方はさすが。こちらのモデルはBUDDYをベースにバックカントリー向けの仕様をプラスしたもの。ベースにしたとはいえ、バックパネルを採用し、ベルト類を一新するなど、中身はまったく新しいバックパックとなりました。

「バックパネルの開けやすさや荷物の取り出しやすさはどうだろう」「 BUDDYで採用しているトップの仕様はバックカントリーでも通用するか」「スノーボードを装着したときの背負い心地は」など、齋藤も一緒になってライディングに参加し、現場での行動をもと使用感をチェックしました。

開発1シーズン目はプロトタイプをver2まで進化させ、さらなるテストやアイデアのブラッシュアップは次のシーズンに持ち越し。製品化まではまだまだ長い道のりがつづきます。

2022-2023年シーズンはプロトタイプver3をテスト

降雪の少ない今年の冬。天気予報に振り回されつつ、ふたたび白馬へ。「今シーズンはちょっと違うのを作ってみた」と、齋藤が持ってきたのが、ジッパータイプを採用したプロトタイプver3。前回のプロトタイプを継続して使用していた船山さんが感じた課題点を解決しつつも、別視点での感触を確かめるべく、まったく異なるスペックでのテストがはじまりました。

 

―2021年に作ったサンプルはBUDDYをベースにしたモデル。ガンダムで言えばザクをベースに開発したグフのようなもの。今回テストしたサンプルは新規に開発したドムのようなもの(わかるよね?)。どちらも一長一短があるけれど、まだまだ結論は急がない。それよりも毎シーズン、フィールドで遊びながら「あーでもない、こーでもない」と意見を交わすのが楽しくてしょうがないのだ。この開発プロセスが大好きだから自分でブランドをはじめたということもある。だからできればこのプロジェクトは終わりたくない。つまり商品化はまだまだ先ということです。もしこの記事を読んでくれた皆さんから熱烈なラブコールが届けば話は別ですけどね。(デザイナー・斎藤)

降雪を狙って、白馬へ

ここからは、今シーズンのフィールドテストの様子をお届け。テストのために向かったのは白馬乗鞍。ドロップポイントまでのハイクアップや歩行距離も長く、多様なシチュエーションが見込めるため、背負い心地やギアを使用する際の使いやすさ、ライディングでのフィット感のチェックには最適。しかも、前日の降雪もあり「パウダーを滑れるかも!?」と期待いっぱいでテストに挑んだのでした。

今回のメンバーは、ひきつづき開発のアドバイザーを担う船山潔さんと、PAAGOWORKSのニューカマー・クノール。スノーボーダーとスキーヤーという2つの視点でバックパックのテストを行います。

リフトの最終駅を降りたらハイクアップモードに切り替え、バックカントリーへ。スキーを背負っての登りの感触や、休憩時の荷物の取り出しやすさなど、現場でしか気づけないポイントを確かめていきます。

実は、天狗原まで出たタイミングで濃霧が発生し、途中の斜面を滑ってテストをしようかという話にもなったのですが、次第に視界が開けてきたので思い切ってピークを目指すことに。

華々しく見えるバックカントリーですが、ドロップポイントまでは淡々とハイクアップ。ゲレンデトップから登りはじめ、樹林帯を抜け、雲の上の世界へ。はるか眼下に雲海を望みながら白馬らしい絶景の雪山を歩くことは、それだけでも楽しいもの。雪質を確かめ、どの斜面を滑ろうか思案しつつ、標高を上げていきます。

天狗原を越え、乗鞍岳へ到着。ここでウォークモードを解除し、装備を整え滑り出します。小休止のち、レイヤリングを変え、スノーボートとスキー板を装着。ウェアやギアなど装備を頻繁に出し入れするのもバックカントリーならでは。荷物の出し入れがしやすいか、荷物量が変わっても背負い心地を維持できるかなど、実用性を確かめながら準備を進めます。

テストと言いつつも、やっぱりパウダーを滑りたい!

山頂付近は強風のため雪は飛ばされ、シュカブラと氷に覆われていました。目星をつけていた斜面に向かって移動。ここまで登ってきた達成感に浸りながら、ラインをチェックし、ついにドロップイン!

わずか数十秒のライディング。ゲレンデでは味わえない感触と景色、コンディションは良好。風下のオープンバーンは吹き溜まりになっていて、期待以上のパウダーに一日の疲れも吹き飛びます。

バックカントリーでは、アバランチギアをはじめとする装備一式を背負って運ぶ道具であると同時に、背負ったまま滑らなければならず、バックパックのフィット感がランディングのパフォーマンスを大きく左右します。重心位置の確認や左右のブレがないかなどもチェックするためにも、こうしたフィールドテストが欠かせないのです。

バックカントリー向けバックパックの開発はまだまだつづきます!

左・船山潔(ふなやまいさぎ)
1995年生まれ。長野で生まれ育ったプロフェッショナルの登山家・クライマー・スノーボーダー。現在は地元の佐久を拠点に、ひとりひとりの要望に合うアウトドア体験を提供する「Gen.」を主宰し、ガイドも務めている。

右・久能岳士(クノール)
ナビキャンへの参加がきっかけでパーゴワークスでアルバイトをすることになった、アドベンチャレーサー見習い。海外でのレース経験もあり、何にでもなれそうけどまだ何者でもない。髭を生やしたり髪を青くしたりと迷走中のZ世代。

船山さん:アクティビティや山道具が多様化している今の時代に、春夏秋冬、トレイルからバックカントリーまで一つのバックパックで行きたいとお伝えしたのが始まりでした。バックパックは僕たちの山の可能性を広げてくれます。より遠くへ、時には違う場所へ連れて行ってくれるモノ。パーゴワークスのラッシュが多くの人がトレランを始めるきっかけになったように、冬山やバックカントリーなど新しい遊びのきっかけ作りになれたら嬉しいです。山の遊びや自然が豊富な日本で、どの時期でもどの山でも使えるバックパックの探求をパーゴワークスと一緒にしていきたいと思います。

クノール:僕にとって雪山登山、BCスキーは初挑戦。それでも家族とのスキー旅行は小さい頃からの毎年の恒例行事。いつか挑戦してみたいとずっと思っていたので「新人だから」とビビっている場合ではありません。最初にやったことは冬山に挑戦したいと社長に直談判、威勢よく「スキーならまじ任せてください。俺、やれます。」とアピールしまくることでした。フィールドは僕にとっての夢の国。ハイクアップで標高を稼ぐにつれてボルテージも上がり続け、ついにドロップイン。青い空と白銀の境界を切り裂き、雪原に飛び込んで行くような感覚が忘れられません。僕のライドの直後は船山さんの流麗かつアグレッシブな滑り。刻まれていくシュプールにただただ見惚れてしまいました。猛アピールの甲斐がありました。

3シーズン目を迎えたバックカントリー向けバックパックの開発。今回のフィードバックをもとに、さらなるブラッシュアップや設計変更が行われ、ver4、ver5と、プロトタイプは進化していきます。これまでにない、PAAGOWORKSがつくる最上のバックパックを目指し、試行錯誤はまだまだつづきます。応援のメッセージ待っています。発売まで、今しばしお待ちください!