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[Friends' Story 01] 西方勇人 〜面白い仲間と一緒に遊ぶために〜
2023.12.26 FRIENDS RUN

[Friends' Story 01] 西方勇人 〜面白い仲間と一緒に遊ぶために〜

パーゴワークスのアンバサダーや、ブランドに関わる人のストーリーを綴る連載。第1回はRUSHランナーの西方勇人さんだ。富山県出身の31歳は身長155cmと小柄な体格ながら、後半に順位をぐんぐん上げていくパワフルな走りをする”小さな巨人”である。

そんな西方さんは、年間を通してレースを走りまくっているからすごい。2023年は12レースを走り、そのほとんどが昼夜を通して走る100km以上。一般のトレイルランナーがロングレースを走るのは年間1〜2本であることを考えると、際立っている。しかも、西方さんはそのうち5レースが3位以内!入賞が多いため、「実は双子で交代して走っている」と噂されるほどだ。

左:(8月・UTMB)今年初参加したUTMB。日本人2位でフィニッシュした。/右:5位だった2022年のコジオスコの表彰式。入賞した他の選手と頭ひとつ分の身長差があり、周りがザワついたそう。

1年間で7本の100マイルレース

(7月・Ouray100)獲得標高1万3000mにもなるOuray。左側に別のランナーが見えるが、かなり登っていることがわかる

−−今年、西方さんは12レースを走って上位入賞ばかり。しかもほとんどが100km超えのレースです。ほぼ毎月走っていて、出過ぎじゃないですか?

レースの距離や本数は去年と変わらないので、あまり特別な感じはしません。会社の休みに出られるレースにエントリーしていたら、こんなに増えちゃいました(笑)。今年の結果を改めて振り返ると、結構上位で走れていますね。いつも後半追い上げ型のレース展開が多いんですが、今年は前半から前の方で走れたなという印象です。練習のペースを上げたのが良かったのかも。あ、でも無理はしないように気をつけています。走りながら腕時計の心拍を見たりして、自分の感覚を大事にしているんです。レースの翌朝も痛みなくジョギングできるくらいでいたいな〜と思っています。

黄色の網掛けが100マイルレース。一般のトレイルランナーが走るロングレースは1年間に1〜2本程度で、こんなに出場しない。

追い抜いた選手から「GOOD LUCK…」

−−今年は国内だけでなく、フランスのUTMBやオーストラリアのコジオスコなど海外レースも走られていましたね。一番印象的なレースを教えてください。

UTMBも初めてだったので、そのお祭りみたいな雰囲気に圧倒されましたが、一番印象に残っているのはアメリカで走った「Ouray100」です。アメリカのレースは初めてで、(完走賞の)バックルが欲しくて出たんですよ。高所を走るのは平気でしたが、ペースがなかなか上がらなくって。紫外線は強いし、レース中は結構気温も高かったんです。でも、海外の選手たちは暑さに弱かったみたいで、後半にどんどん順位を上げられました。2位の選手を抜かしたとき、彼は僕にサムズアップして「GOOD LUCK...」と言い残して離れていきました(笑)。ヘロヘロだった1位の選手も抜かして、終盤40kmは一人旅。フィニッシュに辿り着くと、なんとフィニッシュゲートはカラーコーン!これにはさすがに笑っちゃいました。でも、レースの手作りな感じがとても気に入りました。

(7月・Ouray100)念願のバックルを手にする西方さん。後ろに見えるカラーコーンがフィニッシュゲート。

トレイルを走り始めたきっかけは、TJARのDVD

−−今年は大躍進の1年になりましたが、トレイルレースで表彰台に上るようになったのはここ5年ほどですよね。そもそも、いつから走り始めたんですか?

小学校でサッカー部だった時に、双子の兄と一緒に走っていました。走るのは好きだったのですが、ボールがなくても良いかなと思って高専の3年生でサッカー部は退部。その後も大学院までランニングを続けていました。あ、なので双子なのはホントです(笑)。一卵性だけど、兄は僕よりも身長があるのであんまり似てないですよ。今は多分走っていないので、交代でレースに出てはいないです。子供の頃は一緒に秘密基地作りもしていたので、アウトドアって意味ではその頃から外で遊ぶのは好きだったかもしれないですね。

(9月・信越五岳)信越五岳の100マイルでは後半80kmほどを一人で旅した

−−双子説は本当だったんですね! それはさておき、どうして山を走るように?

きっかけは2012年のTJARを映した「激走!日本アルプス大縦断」のDVDでした。「旅をするのが楽しそう」と思って、観終わってすぐにトレランシューズを買ってトレランを始めました。僕はもともと旅が好きだったので、TJAR戦士の阪田啓一郎さん※が、自分で面白そうなルートを作って走っている姿に憧れました。大学生の頃には、住んでいた名古屋から実家の富山までの200kmを4日間くらいで走ったこともあるんですよ。その時はストックシェルターで泊まりながら、ロードを繋いで走りました。「TJARごっこ」なんて言っていたのに、ライトを忘れて大変でした(笑)。

−−そんな旅を経験しているなら、TJARの出場も考えているんですか?

TJARの出場ですか?2019年に出場するための課題をやったのですが、書類や手続きが多くて申し込むのを辞めたんです(笑)。その後、ルールが変わってレース中に山小屋が使えなくなっちゃったので、TJARを目指すのはキッパリやめました。だって山小屋でカレーを食べるのが楽しみだったから!

夏にはTJARのコースでもある薬師岳へ走りに行くことも。

仲間と走る楽しさを知って強くなった

浜松うましかのチームメイト。西方さん曰く「僕よりももっと面白い人ばかり」

−−山を走り始めたのはまだここ数年のことなんですね。何がきっかけでこんなに強くなったんですか?

仲間が増えたのが大きいんじゃないですかね。山に行くと知り合いって増えるじゃないですか。山とか大会がきっかけで、2018年に浜松市に拠点のあるランニングチーム「浜松うましか」に入ったんですけど、一緒に走っているうちに僕も100マイルを走りたいと思うようになりました。大学生の時に入ったランニングサークルは雰囲気に馴染めず短期間で辞めてしまったのですが、うましかはみんなが面白いチャレンジもしているんです。それに影響されて走っていたら強くなりましたね。2019年には鏑木毅さん※が主催する「チーム100マイル(通称チー100)」にも参加しました。普段は一人で走っているので、仲間と走れるのは貴重です。仲間にこんなことしたよ、って自慢したいのでトレーニングのモチベーションになりますね。

100マイルを走るのはレースだけじゃない!

ツールド桃太郎のコース上にある像と記念撮影

−−仲間の存在が大きいんですね。チームの練習もあると思いますが、普段はどのように練習しているんですか?

普段は週3日、朝に湖西連峰の神石山を走っています。トレイルにすぐに行けるように、山の近くに引っ越したんですよ!トレイルを走りながら、自分の体の調子をチェックするようにしています。あと、毎日仕事終わりにロードを10km走っています。今年はこのロードを走るペースを上げていて、今は大体1キロ4分くらい。この練習のおかげで今年は調子がいいんじゃないかな。

引っ越してから週3回登っているホームマウンテンの神石山。

−−草レースも走っていますよね?

そうです!個人やチームの練習、そしてレースの他に、毎年1月の頭には「ツールド桃太郎」という草レースを仲間みんなで走っています。愛知から岐阜にかけて里山を繋いだ100マイルなのですが、寒さに加えて累積標高1万mというアップダウンがあってきついんです。今年はDNFでした。それが悔しくて1月末にリベンジして完走。100マイルは何本走っても奥深いなあと実感しました。ランニング仲間と一緒に話しながら走れるのが楽しくて、恒例行事になっています。(※来年は2月開催)

ツールド桃太郎を一緒に走る仲間たち。

主食はBASEブレッド、レース前にはテント泊

会場付近にテントを張って宿泊。海外レースで野宿したこともあるそう。写真はNINJA TARPを使用。

−−これだけレースを走るとなると、食事や睡眠などにも気を遣っているんですよね?

全然です(笑)。僕は少食なのと、あまり食事に興味がなくて、基本的に完全食のBASEブレッドというパンばかり食べて生活しています。定期購入プランを継続しすぎて会員ランクが一番上になっちゃいました(笑)。パンだけで足りない時はナッツも食べています。BASEブレッドはレースの補給食として持っていくこともありますよ。あ、でもストレッチは毎日欠かさず行っているので、そういう点では回復も意識しているかも。

−−レース前日はどうやって過ごしていますか?ルーティンとかあるのかなと思って。

初めてレースに出た時から、会場付近のキャンプ場や公園にテントを張って野宿しています。当時は大学生だったので、一番安く行ける方法を考えた時に野宿しか思いつきませんでした。たしか飛騨高山のウルトラマラソンに出たのが最初で、125ccのバイクに乗って下道を4時間かけて行って、野宿したんです。そうだ、ヒッチハイクでレース会場に行ったこともありますよ。受付に間に合うか不安でしたが、高速道路に乗れてからは安心しました。ヒッチハイクもコツがあるんですよ(笑)。ヒリヒリしながら行くのが楽しいんです。

「いろんなランナーに一緒に遊んでもらいたい」

(8月・UTMB)Ourayで一緒に走ったAnthony(左)と再会。兄弟のようだが、年上なのは西方さん。

−−先週末にはオーストラリアの100マイルレースを3位で完走。おめでとうございます!年内のレースが終わったばかりですが、早速来年の目標を聞いても良いですか?

んー、現時点で目標はないです。僕はあんまり順位に興味がなくって。僕にとって走ることは「遊び」のひとつ。他の選手と一緒に遊んでもらいたいなって思って走っています(笑)。そのために実績を作りたくて。今回出場したコジオスコは、序盤から調子が悪かったのですが、中盤に同じRUSHランナーの澤柳(匠)さんと合流できました。おしゃべりしながら走ってリラックスできたし、かなり回復できました。最後は置いて行かれてしまいましたが、それは澤柳さんとの気持ちの差なのかな…。他にもOuray100では、友達のAnthonyが宿やレースのサポートをしてくれました。途中の区間ではペーサーとして走れて楽しかったです。2人以外にもたくさんライバルであり遊び相手がいるので、一緒に遊んでもらうために、日々のトレーニングをしています。

「やっぱり面白いのがいいじゃないですか」

(12月・コジオスコ)中盤は同じRUSHランナーの澤柳選手(左)と走り、西方さんは最終的に3位でフィニッシュ!

−−こんなに上位に入っているのに、順位は狙っていなかったんですか!? では最後に、今後走りたいレースを教えてください。

Mt.FUJI 100(旧UTMF)は地元の仲間や知り合いに会えるし、自分の成長を感じられる思い入れのあるレースなので毎年走りたいです。あと、いつかアメリカのHardrock100※とWestern States※を走ってみたくて申し込んでいるのですが、抽選の倍率が高くて…。その2レース以外にも、アメリカの100マイルレースにもっと参加したいなと思っています。規模は大きくないですが、その土地ごとに面白そうなレースがたくさんあるんです。完走するとオリジナルのバックルをもらえるし、ヨーロッパに比べてクレイジーな人が多いんですよ。なんでそんなレースを目指すのかって?やっぱり他の人が参加したことのないような、面白いのがいいじゃないですか(笑)。

※阪田啓一郎…TJARを2012年、14年に完走。自分でルートを作って走るセルフチャレンジをしており、親不知(新潟)〜大浜海岸(静岡)520km/8日9時間や、敦賀(福井)〜潮岬(和歌山)460km/6日18時間などを完走している。
※鏑木毅…富士登山競走や日本山岳耐久レースなど数々の山岳レースで優勝。2009年のUTMBでは3位(日本人過去最高位)。現在も競技を続けながら国内のトレランレースにディレクターとして関わる。
※Hardrock100…平均標高3000m超の高所を走る米国のトレイルレース。出走枠が150名で申込回数に応じて当選倍率が上がる。
※Western States…1974年に米国で始まった世界最古の100マイルトレイルレース。

西方勇人(にしかた・はやと)

1992年、富山県生まれ。現在は静岡県内の自動車会社でエンジニアとして勤務する。23年にトレニックワールド彩の国100mile2位、Ouray 100(米国)1位、信越五岳トレイルランニングレース100mileで2位など、計7本の100マイルレースを完走して入賞多数。レース前夜は会場近くにテントを張って野宿するのが恒例で、食事は完全食のBASEブレッドが主食。Instagram:@24_direction

★西方さんの声が聴ける! 過去に出演されたポッドキャストはこちら

【お気に入りパーゴアイテム】

 RUSH 7R(Glacier Silver)

「2019年にレース会場でRUSHを初めて背負って、僕の体にフィットしたのが嬉しかったんです。前ポケットが好きで、補給食をたくさん入れてもポケットを絞れるのが良いですね。なによりも色が気に入っています!(笑)」