若岡拓也の日本列島大縦走

若岡拓也の日本列島大縦走 #7
2023.09.01 若岡拓也

若岡拓也の日本列島大縦走 #7

PAAGO MAGAZINEでは、日本列島大縦走中の若岡さんの走破記録を週ごとにレポしていきます。今週はとうとう2,000kmを突破! 那須岳、鬼怒川温泉、そして日光を抜けていよいよ信越トレイルに突入しようというところ。みなさんもどこかで若岡さんに会ったら、ぜひ写真を撮ってパーゴワークスまで送ってください! どんどん紹介していきたいと思います。

日本列島大縦走の詳細については、こちらをご覧ください!

今週の記録

8/23 40日目 0km

夜明け前に目を覚ます。体がやけに重かった。見慣れぬ景色に一瞬混乱してから宿に泊まっていることを思い出し、水を飲んで寝直す。再び意識が覚醒した時には、時刻は7時前だった。寝坊していた。体の重さは変わらず。身支度をする気になれなかった。 窓の外は真っ白、雨が降りしきる。風も強い。那須岳を抜けるには体力が持たないかもしれない。不安になり、停滞を決めた。自信がないのはたぶん疲れのせいだ。布団の中でじっと回復するのを待った。

8/24 41日目 58.85km

二岐温泉の近くから登山道に入る。福島の最奥のひとつである。踏み跡は残っているものの、ササが道を隠そうとする。ひとつ、ふたつとピークを踏むごとに、ササの勢いが増す。登山者が減っていくことを意味していた。ここから栃木側に抜ける者はどれほどいるのだろうか。ほとんどいないだろう。われながら物好きである。 白河高原から那須岳を越え、那須高原に下りる。別荘地to別荘地の完成だ。このルートの特徴は山から下りても、コンビニ、自販機すら見当たらないところ。別荘は立ち並ぶものの、各種商店がなく、生活感が希薄であった。補給をするために20km弱は走ることとなった。

8/25 42日目 60.54km

釈迦ヶ岳から鬼怒川温泉を経て日光まで。スイーツ食べ放題の宿をプレゼントしてもらい、夕食の時間までに到着しなければならない。以前から益子町のcafeマシコビトにお声がけいただき、宿泊OKとうかがっていたものの、そちらは遠いこともあり泣く泣く断念。淡々と山を越え、淡々と走る。夕食には間に合ったものの、スイーツはお代わり8品ほど食べたところでメニュー表を下げられてしまった。

8/26 43日目 13.68km

早朝、東照宮のそばから女峰山に向かうはずが、参道で足が止まる。あまりに気持ちのいい空間。東照宮はさらに引力が強かった。門の装飾ひとつ取っても、細部にまでこだわっている。山には行かずに拝観が始まる午前9時を待って、拝観料を支払う。美術館のようだった。進まない代わりに日光駅の近くにある神ノ主山、鳴虫山を登る。

8/27 44日目 39.67km

前日に堪能した東照宮から女峰山にリトライ。長い尾根道は膝下までの背の低い笹藪に覆われていた。それが延々と続く。世界遺産から登る修験の道は、ことさらに静かだった。女峰の山頂で予定よりも到着が遅れてしまう。進行方向には雨雲。真名子岳に向かうのを諦め、鞍部の林道から迂回して男体山へ。その山頂部では、日本屈指のトレイルランナー星野由香里さん、埼玉や神奈川から来た友人と合流して一緒に下山。トップアスリートの話を聞きながら下りる贅沢な時間になった。

8/28 45日目 33.28km 

裏岩手縦走路を一緒にたどった20代女子が再登場。日光湯元を出発して早々に不調とのこと。原因に心当たりはないと言っていたが、2日前に夜通し藪を漕いで山登りをしていたという。絶対にそのせいだ。指摘してみたものの、頑なに否定する。行動を開始しても復調せず、転びそうになったり踏ん張りが効かなかったり。尾瀬には行かずに片品村へ下りることに。これも山旅の一部である。

8/29 46日目 56.85km

鳩待峠まで舗装路からアプローチ。峠の休憩所で朝食を取ろうとしたら、食堂のお姉さんがさっき歩いてたでしょ!と通勤途中ですれ違っていた模様。スイカをサービスしてくれた。尾瀬ヶ原には立ち寄らないつもりだったが、尾瀬小屋のオーナーと2年前にすれ違い、連絡先をもらっていたことを思い出し、足を伸ばすことに。ランチをごちそうになる。冬は積雪が7mを超え、雪下ろしに来るだけでも片道7時間がかかるそうだ。機会があれば手伝いに行きたい。

今週のつぶやき

とある出会いで思ったこと

 

たまたま知り合った方と会話が弾んだ。

たまたま行った屋久島で山が好きだったことを思い出し、60代になってから、いろんな山に行くようになった。最初に屋久島へ行った時に宮之浦岳も、モッチョムも行かなくてね。後から考えると残念だったなあ。そう話す表情がとても生き生きしていた。

知床から山をつないで走ってきていると話すと、大仰に驚くでも、理解できないと笑うでもない。少しほほえみ、頭の中で地図を思い浮かべるよう視線を一度右上に外す。その後でこちらに視線を戻し、話の続きを促す。ゆったりとした一連の動作に知性を感じる人だった。

今が人生で1番若い時だから。そんなことを僕が口にする。男性はまた頷き、本当にそうだね。と、言った後に、家族の話をした。

今度、90代のお義母さんを連れて立山に行ってくるとのこと。双六、三俣蓮華、雲の平などを巡る縦走がしたいそう。自分の脚だと3日、いや4日はかかるかな。コロナで山小屋が泊まりづらくなって難しいね。テントを運んでだと、体力的に自分じゃちょっとね。。。

冗談めかして、ポーターやりますよとお伝えしたものの、会話を終えてから、本当にやれたら面白そうだと考えた。 

 

誰かにとっての山の夢や憧れを一緒に叶え、間近で見届ける。僕が自分のやりたいことをやりつつ、いろんな人にサポートしてもらっているからこそ、逆の立場でやりたいことを手伝う。それも最高に楽しそうだ。

体力に自信がない。行きたいけど、重い荷物を運んでの縦走は不安。そんな方の力にはなれる。ガイドのようにはできないが、ともに歩き、喜びやキツさを共有することはできる。

会話をしながら、そんなことを考えていた。今回に限らず、いろいろと見聞きするほどに、やりたいこと、行きたい場所は増えていく一方だ。