ZENNの名前のとおり、このシェルターも「日本の山の最適解」を追求すべく開発に臨みました。基本は軽量コンパクトで雨風に強いことを最優先にしたので、当初は利便性をも犠牲にした「ぎりぎりなプロトタイプ」も検討しました。そのひとつがフロアレスのドームテント。一般的なフロアレスシェルターよりも空間効率が高く、ドームテントより軽量。これはイケるぜ！ついでに入口ジッパーも廃止して、底部から潜り込むという斬新なデザインでしたが....やっぱり強風下では使い物にならずに開発を断念。また、室内の保温性を高めるために、アルミ蒸着した生地を使用したプロトもテストしましたが、これは就寝時の寒暖差による結露がひどくて、やむなく断念しました。

ほかにも様々なアイデアにトライして、それはそれは楽しい日々でしたが、なかなかブレークスルーできない状況が続きました。いったんデザイナーとしてのエゴは捨てて、道具本来の機能に立ち返ろう。そうしてたどり着いたのは、あっけないほどシンプルな答えでした。つまり「山で安心して眠れること」。良い睡眠が翌日の安全で充実した山行につながることは事実で、多くのハイカーがテントという道具に求める究極のファンクションです。私はこの一点に集中して再度デザイン開発を進めました。

結果的にはジッパー式の入り口があり、防水仕様のバスタブ型フロアも付いた「安心な仕様」になりましたが、これもすべては山での快眠のため。
ずいぶん前に完成されたと思える山岳ドームテントを見直し、デザインを再構築する。そんな開発プロセスはZENNバックパックと同じくエキサイティングそのものでした。

今年、このZENNシェルターをテント場で見かけたら、きっと嬉しくて駆け寄ってしまうので、入口のジッパーはしっかり閉めておいてくださいね。

PACK AND GO !